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セルシオは恐ろしく静か

 名古屋大学教授の高田広章氏らは,自動車の制御用リアルタイムOSの仕様「OSEK/VDX」に準拠したオープン・ソースのリアルタイム・カーネルを開発した(発表資料*1)。オープン・ソースのμITRON仕様OS「TOPPERS」を開発する団体「TOPPERSプロジェクト」を通じて(関連記事*2),まずは2004年6月に同プロジェクト会員向けに,その後一般向けに配布を開始する。OSEK/VDX仕様OSは,自動車の電子制御ユニット(ECU)向けとして主に欧州で普及しつつあるが,これまでは商用OSしかなかった。なお開発は,高田氏の研究室と名古屋市のソフトウエア開発会社ヴィッツが,名古屋市工業研究所およびルネサス テクノロジと協力して共同開発した。
 開発したOSは,ver. 2.2.1のOSEK/VDX仕様でコンフォーマンス・クラス「ECC2」に準拠する。現在は,ルネサステクノロジマイコン「M32C」上で動作するが,M16CやH8Sなど他のマイコンにも順次対応する予定である。なおOSEK仕様OSに加えて,OIL (OSEK implementation language)仕様に基づくコンフィギュレーション・ツールも併せて開発した。
 自動車のECU向けOSとしては今回のOSEKのほかにも,TOPPERSプロジェクトが手掛けるμITRON仕様OSが使われることがあり,一部機能が重複する。競合するOSを開発したことについて同プロジェクト代表の高田氏は「TOPPERSプロジェクトの基礎はμITRON仕様OSにあるのは今後も変わらないが,我々の技術やノウハウに対して産業界にニーズがあるのならばそれを生かせるような活動をしたい。そういう思いからOSEK仕様OSを開発した」とする。なお,発表資料にはトヨタ自動車統合システム開発部の細谷伊知郎氏が「我々もTOPPERSプロジェクトのメンバーとして今後の成果に期待し支援していきたい」とコメントを寄せている。



「IT商売がしんどくなってきた」。この4月にTIS代表取締役専務から、インターネット接続サービスを提供しているインターネットイニシアティブIIJ)系ITサービス会社のIIJテクノロジー社長に転じた在賀良助氏(写真、撮影・柳生貴也)は、システム構築事業が大きな曲がり角に来ていることに危機感を持っている。
IIJテクノロジーは社員約200人で2003年度は約130億円の売り上げを見込んでいる。システム構築を請け負うITサービス会社は、1人当たり売り上げが1000万円から2000万円程度なので、同社の約6000万円はぐんを抜いて高い数字といえる。ITインフラ提供に特化し、システム構築は同社に出資している日立ソフトウェアエンジニアリングなどが担当する仕組みになっているからだ。しかも、顧客数の増加で毎月の収入が増えるストック型のビジネスモデルである。
しかし、少しずつ行き詰まってきている。実は2002年度の売上高は167億円もあった。IIJグループだった通信会社のクロスウェイブコミュニケーションズ(昨年12月にNTTコミュニケーションズに営業権譲渡契約を結ぶ)の影響で大きくダウンした。黒字もわずかだそうだ。新しいITインフラを調達するなど先行投資が年間約20億円もある。サービス・メニュー面も運用・監視などITインフラ絡みに留まっている。顧客数も100社である。
そこで着目したのがASPである。第三者のデータセンターに置いた業務アプリケーション・ソフトを、顧客企業はインターネットを介して使う仕組みである。自社でサーバーも業務アプリケーションも抱える必要がなくなるので運用・管理の負担が少なくなるなどのメリットがある。料金も電気や水道のように毎月、使った分だけを支払うので、初期投資を抑えることも可能になる。
ASPはいいビジネスモデルだと思う」(在賀氏)。IT最新事情10回で取り上げたCRM(顧客情報管理)ソフトをASPで提供する米セールスフォース・ドットコムはその代表的な企業である。国内でもジャストプランニングの外食産業向けの受発注システム、内田洋行の宅配便向け荷物追跡システムなどといったASPが売り上げ、利益を拡大させている。ただし、規模を大きくするには巨大な投資が必要になる。


さらにソフトについては「保守」という、設計・開発に匹敵するくらい面倒な作業が発生する。保守用文書というものも、なかなか訳に立たない。その現実は、同書の中でも指摘されている。しかし訳に立たないからと言って、開発者がずっと保守し続けるわけにはいかない。
ユーザー企業に所属しない、ソフト会社プログラマが開発をする以上、「将来にわたって自分一人で完結する」ことはありえない。開発終了後の保守まで見据えたなんらかのコミュニケーション手段が必要になる。